筆者:Leila Abdul-Rauf
Roy Orbisonの1989年の返り咲きアルバム『Mystery Girl』は、1960年代の前半に『Crying』、『Only the Lonely』、『Oh, Pretty Woman』などの連続トップテン ヒットによって国際的なスターダムにのし上がって以降、初めて好評を博した作品だった。残念ながら、Royは『Mystery
Girl』の大成功をその目で見る前に亡くなった。52歳という若さでの早すぎた死から2か月もしないうちに、Virgin Recordsはアルバムをリリースした。しかし、Royは息を引き取る直前まで絶好調だった。ちょうど1年前にはGeorge Harrison、Bob Dylan、Tom Petty、Jeff Lynneと共にThe Traveling Wilburysを創設していた。仲間のWilburysと共に作り、死後にリリースされたアルバムで国際的ヒット曲となった『You Got It』や、『The Comedians』のカバー曲、U2の手になる『She's a Mystery to Me』には、Royの代名詞とも言える情熱的な歌い方と独自性が盛り込まれている。
もともとは初期のパンク/ニューウェーブを象徴するElvis Costelloが作り、リリースした『The
Comedians』は、バースごとにゆっくりと高まるボーカル メロディーと、高揚感のあるホーンのセクションに溶け込んだクライマックスのコーラスによって、諦めと心の痛みを物語っている。Royのバージョンでは、オリジナルのアップビートな鼓動を取り除き、よりダウンテンポなビートと最小限のギター コードが採用されている。スネアドラムの断続的なマーチは、1962年のRoyのヒット曲『Running Scared』を有名にした雰囲気と似ている(Maurice Ravelの『Boléro』も思い起こさせる)。Royの一番下の息子、Alex Orbisonはこの曲を「Roy以外が作った『Orbison』の曲の中で、最高とまでは言わないまでも、最も優れた曲の1つ」と言っている。
『She's a Mystery to Me』が生み出された経緯は、曲作りにおける真の共時性を示している。1987年6月のある夜、U2のフロントマンであるBonoは、『Blue Velvet 』という映画のサウンドトラックを聞きながら眠りに落ちた。そのサウンドトラックには、Roy Orbisonの幽玄な曲『In
Dreams』が収録されていた。翌朝目覚めたBonoの頭の中では、サウンドトラックのものと思われる曲が流れていた。だが、そうではないのだと気付いたとき、Bonoはその曲の基本的な形を書き下ろし、その晩のウェンブリー・アリーナでU2と共に演奏した。コンサートの後、サプライズで楽屋を訪れたRoyのために、Bonoはその曲を披露した。2人は後にその曲のレコーディングを行い、それが『Mystery Girl』というアルバム名のもととなった。魅惑的なギターのアルペジオが曲のバースで繰り返される一方、コーラスはRoyの感情的な高めの声区を特徴としており、彼独自のビブラートがこの心揺さぶるバラッドの音響パノラマを満たしている。
かの「ビッグO」にして「ロック界のカルーソー」(ロック スターが2つもニックネームを持つことはそうそうない!)が晩年まで生きていたら、どんな素晴らしい曲が生まれていたことか。Roy
Orbisonのカントリー混じりのロックンロールは、ステージ上での動きのなさ、黒く染めた髪、黒のサングラス(おそらくステージ上での恐怖と戦うためのもの)とともに、当時の男性ロックンロール歌手には珍しい弱さを垣間見せている。Royのクラシック ロックとサウンドが時代遅れになることは、決してないだろう。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)
Leila Abdul-Rauf、カリフォルニア州オークランドを拠点とするマルチプレイヤー、作曲家。メタルバンドのVastumとHammers of Misfortune、エセリアル ポストパンク バンドTerebellumでギタリスト兼ボーカリストを務めている。また、自身の名義と、エレクトロニック トリオIonophore、シンセフォーク
デュオFyrhtuで環境音楽の作曲・制作も行っている。各国でツアーも実施しており、余暇にはギターとボーカルの個人インストラクターをしている。
「Roy Orbinson ontving gouden plaat voor 'Pretty Woman' in Singel
concertzaal」(著作者:Jack
de Nijs / Anefo)はCC BY-SA 4.0 Internationalライセンスのもとで使用を許可されています。
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