30.June.2021

バチャータを読み解く、パート3:ギター

筆者:Leila Abdul-Rauf

上の画像で、右のギターが左のギターよりも小さく見えるのを不思議に思う人もいるかもしれない。これはレキントと呼ばれる特殊なギターだ。レキントは、スペイン語とポルトガル語の言葉で、あらゆる楽器の小型でピッチの高いバージョンを意味する。クラシカル ギターのだいたい4/5ぐらいの大きさをしているナイロン弦のレキントは、通常のチューニング(A-D-G-C-E-A)よりも4音程高くチューニングされた、バチャータ バンドのメロディーをリードする楽器だ。

デレーチョでは、通常、レキントがボーカルのメロディーからリフを区切り、曲中の位置に応じて大いに様変わりする。パーカッション楽器のように、レキントは拍子のすべてのアップビートとダウンビートで音色を奏でる。すべての拍子で計8音を奏でるということだ。ヴァースでは、レキントのリフがしばしば上がり下がりするアルペッジョ演奏のコードになる。Romeo Santosの曲『You』はその例だ。1分あたりの特徴的なレキントのパートを聴いてもらいたい。

リズム ギター、またの名をセグンダは、普通は標準的なサイズのアコースティック ギターであり、デレーチョにおいて、リード ギターよりも決まりきったパターンで演奏される。セグンダは、4つのアップビートとダウンビートすべてで音を奏でる。ダウンビート1、3、4では低い「ベース」の音色を出す。『You』において、セグンダ奏者は、0:17の時点で、すべてのアップビートとダウンビートの2をかき鳴らしつつ現れる。それにより、パーカッションに対してシンコペーションされた感じがして、ほとんどスカの曲を聴いているような感じがしてくるだろう。リズムをさらに混ぜ合わせるために、ベース ギターもまた、デレーチョにおける独自のパターンを奏でつつ、0:17に現れる。ダウンビートの1、3、4ではセグンダのベース音のリズムとマッチしているが、ダウンビートの2は抜かしており、ダウンビートの3へとピックアップを続けている:

1、(2)、3、4

以前の楽器の説明では、デレーチョからマハオへ移行するときに、ボンゴとギラがいかにリズムのパターンを変えるかを説明した。だが、セグンダとベースはマハオでも同じリズムを維持する。『You』の1:17からがそれに当たる。エレクトリック リード ギター ソロの弦が2:07から奏でられる。そのタイミングでリズムが劇的に変わり、曲のマンボのセクションに来たことがわかる。ボンゴでいっぱいの音色が聴こえ続けてくるだろう。そして、叩きつけられる激しいベースの音色も!

Romeo SantosはバチャータにヒップホップとR&Bの要素を融合させた。彼の曲のいくつかにはゲストとしてUsherとDrakeが登場するほどだ。それでも、彼はバチャータの伝統的な構造に敬意を払っている。古いものと新しいものを組み合わせた独特のブレンドだ。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)

Leila Abdul-Rauf、カリフォルニア州オークランドを拠点とするマルチプレイヤー、作曲家。メタルバンドのVastumHammers of Misfortune、 エセリアル ポストパンク バンドTerebellumでギタリスト兼ボーカリストを務めている。また、自身の名義と、エレクトロニック トリオIonophore、シンセフォーク デュオFyrhtuで環境音楽の作曲・制作も行っている。各国でツアーも実施しており、余暇にはギターとボーカルの個人インストラクターをしている。

*「A classical guitar (left) and a requinto guitar (right)」(著作者:Jo Dusepo)はCC BY-SA 4.0ライセンスのもとで使用を許可されています。 *

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