パーカッションはすべてのダンス音楽のバックボーンだ。それがなければダンスはない。ラテンのダンス音楽では、ハンド ドラム、特にボンゴが好まれる。アフロ・キューバンに由来する底の開いたこの小さなドラムは、2つで1つのペアになっていて、それぞれのドラムに名前がある。大きい方のドラムがヘンブラ、小さい方のドラムがマチョだ(それぞれ女性、男性を意味する)。ボンゴは、コンガと並んで、ラテン音楽で最もポピュラーなハンド ドラムだ。ちなみに、コンガの方がボンゴよりも背が高くて細い。
バチャータでは、ボンゴとギラを組み合わせる。ギラの見た目と音は上の動画の通りだ。ギラは、主に1枚のスチールの薄板から作られる金属製の楽器で、表面のデコボコを、硬いブラシでこすって演奏する。ドミニカ共和国で生まれたこの楽器は、バチャータ バンドで主要なタイムキーパーになっている。
前回紹介したように、バチャータの曲はそれぞれ曲中の別々のセクションに現れる3つの相異なるポリリズム、デレーチョ、マハオ、マンボに分解できる。Romeo Santosの『Héroe Favorito』の各セクションで、それぞれのパーカッション楽器が奏でているリズムを見てみよう。
デレーチョは、バチャータの最も基本的なリズムで、主に曲のヴァース(導入部)に現れる。ボンゴとギラはどちらも4つのアップビートとダウンビートをすべて奏でる。つまり、小節の8分音符の8つすべてを奏でるということだ。ボンゴは1、3、4のビートにアクセントを付け、ギラは4つのアップビートとダウンビートのすべてを同じ強さで演奏する。『Héroe Favorito』の0:18における最初のヴァースを聴いてみれば、最もピッチの高いボンゴの打音が1と3のビートにあり、最も低いピッチの打音が4のビートにあることがわかるだろう。ときおり、ボンゴのドラマーは4のビートをドラムロールで強調し、デレーチョを非常にポップな感じにして、次のセクションへと滑らかに移れるようにしている。
『Héroe Favorito』は、0:47の第一コーラスのセクションでマハオのリズムに移行する。ここでは、ボンゴとギラはアップビートをすべて止め、ダウンビートのみを奏でる。今度は、ボンゴは、4つすべてのダウンビートを同じように強調するものの、最も低いピッチの打音は、デレーチョのときと同じように、依然として4のビートにある。ギラは、ここでは、若干長めのこすり方で4つのダウンビートすべてを奏でる。1:13、コーラスの終わりに近づくと、デレーチョに戻る前に、ボンゴとギラが、やや複雑なリズムのパフォーマンスを見せて、躍動感を与える。
3種類目のポリリズム、マンボは、最もエキサイティングな場面になることが多い。ボーカルは声を止め、すべての楽器が即興で演奏されるからだ。「マンボ」という言葉が、キューバ由来の音楽名であると同時にダンス名であることにも、マンボのリズムが、サルサやメレンゲなど、その他多くのラテン音楽のスタイルでも現れるのにも理由がある。このセクションこそが、ミュージシャンとダンサーが自分を自由に表現できるセクションなのだ。「1、2-3、4-1」の厳密なパターンで奏でられるギラを別として、マンボのリズムは捉えがたい事もある。マンボのセクションは、決まりきったリズムのパターンというよりも、エネルギッシュな感情の発露と言えるだろう。ギラによるクラシックなマンボのパターンを『Héroe Favorito』の3:03で聴いてみてほしい。このセクションに続く信じられないようなギターの演奏にも気付くはずだ。次回は、バチャータでギターが果たす役割を紹介しよう。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)
Leila Abdul-Rauf、カリフォルニア州オークランドを拠点とするマルチプレイヤー、作曲家。メタルバンドのVastumとHammers of Misfortune、 エセリアル ポストパンク バンドTerebellumでギタリスト兼ボーカリストを務めている。また、自身の名義と、エレクトロニック トリオIonophore、シンセフォーク デュオFyrhtuで環境音楽の作曲・制作も行っている。各国でツアーも実施しており、余暇にはギターとボーカルの個人インストラクターをしている。
ボンゴの写真:Dan Amrich。許諾を得て使用しています。
ギラの動画:LP Percussion.。
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