1969年、サンフランシスコのフィルモア・ウェストでMountainが初ライブを行った際、そこにはギター兼ボーカルのLeslie Westが考えていた機材が設置されていなかった。ギターアンプではなく、Sunn Coliseum P.A. headが付いた4台の4X12スピーカーキャビネットが待ち構えていたのだ。Marshallのアンプに慣れていたLeslieは、この機材ではどう頑張ってもいい音を出せるわけがない… と思っていた。しかし、プラグを挿し、ボリュームを上げたとたん、彼は恍惚とした。あまりにも素晴らしい音だったので、Leslieはその音を自分のものとして、Mountain最大のヒットとなったシングル『Mississippi Queen』を収めた1970年リリースのデビューアルバム『Climbing!』で採用した。
異例なアンプ選びに加え、Leslieのギターの弦のセットアップも一般的ではなかった。1950年代 Les Paul Juniorに張ったLa Bellaのエレキギター弦セットのうち、ハイEストリングのみをバンジョー用の.010ゲージAストリングに入れ替え、残りの弦を1スロット下げたのである。その当時は超軽量の弦などなく、Leslieの発想は画期的だった。また彼は、ギターのピックアップは1つで十分というタイプだった。 後年、『Guitar Player』誌のインタビューで彼はこう発言している。「1つのピックアップでトーンはいくらでも変えられる。ガソリンいっぱいの部屋にいるとしよう。火を点けるのにマッチは何本必要だ?良さげな1本と、保険の1本で十分だ!」彼のトーンを際立たせたもう1つの大きな要因に、アグレッシブな右手のアタックがある。その重厚なピッキング スタイルは一歩上のディストーション サウンドを実現した。
1973年、サイド プロジェクトでCreamのベーシストJack Bruceと演奏するMountainのLeslie West(右)。
『Mississippi Queen』の収録中、Mountainのベース兼ボーカルであるFelix Pappalardiは、何テイクものレコーディングを求めた。これに疲れ切ったドラマーのCorky Laingは、各テイクをカウベルでカウントし始めた。するとカウベルから始まるイントロをFelixが気に入り、それもトラックに含められることになった。イントロのほかにも曲の随所に現れるカウベルのサウンドが『Mississippi Queen』をカウベル・ロックの第二の代表曲に仕立て上げた。ちなみに第一の代表曲は、6年後にリリースされたBlue Öyster Cultの『(Don't Fear) The Reaper』である。
1970年のビルボードホット100で最高21位まで登り詰めた『Mississippi Queen』は、Ozzy Osbourne、Bachman-Turner Overdrive、W.A.S.Pといった数々のヘビーメタルミュージシャンにカバーされてきた。スローでとどろくようなグルーヴに、定番中の定番であるI-IV-IVのコード進行、Westのアグレッシブなボーカルスタイル、そしてもちろん、あのモンスターのような画期的なギタートーンをもってして生み出された、まさにシビれる一曲である。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)
Leila Abdul-Rauf、カリフォルニア州オークランドを拠点とするマルチプレイヤー、作曲家。メタルバンドのVastumとHammers of Misfortune、エセリアル ポストパンク バンドTerebellumでギタリスト兼ボーカリストを務めている。また、自身の名義と、エレクトロニック トリオIonophore、シンセフォーク デュオFyrhtuで環境音楽の作曲・制作も行っている。各国でツアーも実施しており、余暇にはギターとボーカルの個人インストラクターをしている。
「Leslie West live in 2008」(著作者:Wilson Bilkovich)はCC BY-SA 2.0ライセンスのもと使用を許可されています。
「Jack Bruce and Leslie West」(著作者:Heinrich Klaffs)はCC BY-SA 2.0ライセンスのもと使用を許可されています。
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