オーバードライブは、酷使されたアンプが上げる悲鳴だ。1940~1950年代のエレクトリック・ブルース ギタリストがアンプのボリュームをいっぱいに上げ、アンプ内の真空管が設計上の限界を超える高音になったときに生まれたエフェクトだ。これらのギタリストは、アンプを「オーバードライブ」することで、圧縮、歪み、割れ、乱れが生じることを発見し、そのサウンドをとても気に入った。「丁度いいやり過ぎ」を探るこの初期の実験により、Chuck Berryの『Johnny B. Goode』やAC/DCの『Back in Black』のオープニングで聞けるような象徴的サウンドや、クラシック ロックやヘビー ロックの著名曲の数々が生まれている。ギター信号を破壊しない範囲で歪ませることで、オーバードライブは実質的にロックギター サウンドの基礎となった。
オバードライブを使ったギターサウンドは、1951年時点でHowlin' Wolfの『How Many Many Years』などの楽曲で聞くことができた。
だが、オーバードライブがアンプ内で起きる現象なら、オーバードライブ ペダルとはどういうものだろうか。オーバードライブの定義は年月を経て少し変化している。一部の人間は、アンプをオーバードライブさせるペダルをブースターと呼ぶ。Electro-Harmonix製LPB-1は、最初のブースターであると考えられ、アンプの出力ボリュームを上げることなく、アンプの入力を圧縮することができる。QueenのBrian Mayはブースト ペダル(Dallas Rangemaster がベース)を使用し、Queenの代名詞ともいうべきVox製アンプのオーバードライブ サウンドを生み出している。肝心の音はアンプによるものだ。
現代のオーバードライブ ペダルには、音色の変化を加えるものもあり、どの程度その機能を発揮させるかは、完全にプレイヤーの手に委ねられている。たとえば、Stevie Ray Vaughanは温かみと飽和感の強いトーンでIbanez Tube Screamer( 特にTS808モデルとTS9モデル)を大流行させたが、その使い方はBrian Mayと同じように限りなくクリーンに近く、アンプのゲインは極力下げていた。ペダルによるボリューム変化でアンプはあの魔法のようなオーバードライブに達し、わずかに制御不能ながらも心地よいサウンドを生み出す。
Stevie Ray Vaughanの影響により、Ibanez Tube Screamer TS9 オーバードライブ ペダルは世界中で数百万機が売れた。
当然ながら、ペダルでノイズを生み出すことも可能だ。オーバードライブの大部分は意図的に音量を上げられるようになっていて(ペダルにはよく「ゲイン」または「ドライブ」とラベルが貼られている)、必要に応じてアンプの歪みを強めることができる。トーンを変えられるペダルも多い。世界中で人気のTube Screamerは中音域周波数をブーストするが、90年代に有名になり、現在は法外な価格のついたレア製品であるKlon Centaurはトーンをまったく変化させずにオーバードライブさせる。これらにBoss BD-2 Blues Driverを合わせた3つの製品は大成功を収め、多くの模倣品や派生品を生み出している。
「トランスペアレント系」オーバードライブの世界では、J. RockettのArcherとPaul CochraneのTimmyが人気を博している。
オーバードライブとディストーションには音質的に重複する部分が多く、技術レベルではどちらも信号に歪みを生じさせる。つまり、高レベルに設定されたオーバードライブ ペダルと、低レベルに設定されたディストーション ペダルは似たようにな音になる。オーバードライブ ペダルはディストーション ペダルほど信号を変化させない。多くの場合、微妙な歪みを生じさせるだけでなく、新しいタイプのサウンドを生み出すことを目的としている。微妙な歪みはオーバードライブの肝であり、そのサウンドはプレイヤー、使用機材、音楽的狙いによって大きく変化する。あらゆる選択肢が可能なため、自分が満足のいくクランチを生み出すペダルとアンプの組み合わせを探し出すことが課題になる。音を鳴らして確かめてみるのが一番だ。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)
Dan Amrich は、 雑誌『Guitar World』と『Country Guitar』で音楽記者としてのキャリアをスタート。『Princess Leia's Stolen Death Star Plans]( http://bit.ly/PLSDSP)』 の共同制作者であると同時にクリエイターやソングライターの顔を持ち、Hero Falls の市長も務めている。2014年、Ubisoftのサンフランシスコ チームに加わった。
「Tube Overdrive Guitar Pedal」(著作者:Tim Patterson)は、CC BY-SA 2.0 ライセンスのもと使用を許可されています。
「Ibanez TS9 Tube Screamer」(著作者:Mataresephotos)はCC BY 3.0 ライセンスのもと使用を許可されています。
ArcherとTimmyの写真:Dan Amrich。許諾を得て使用しています。
__これはまだ始まり! Rocksmith+のパワフルな練習ツール、正確な音の検出、リアルタイムでのフィードバックを駆使して、なりたいミュージシャンになろう。 __