1993年、Crash Test Dummiesのシンガー、Brad Robertsは『Mmm Mmm Mmm Mmm』において、疎外感にさいなまれる3人の不幸な子供の物語を歌った。彼の柔らかなバリトン ボイスには逃れがたい魅力がある。このバンドはあいまいさを持たせたコード進行を用いていて、それが曲のメランコリックな印象をさらに際立たせている。そのあいまいさをもたらしている技法が「モーダル ミクスチャー」だ。
曲のまさに最初の2つのコード、GmとDmでモーダル ミクスチャーを聴くことができる。GmはEbメジャーから自然に発生している一方で、キーをうまく確立できていない。IとVのコード、またはEbとBbの方がはるかに成り立つ。Dmはまったく調和していない。EbメジャーのキーでDはディミニッシュでなければならない。しかし、G(ナチュラル)マイナーのvコードとしては成り立つ。Dmの音はEbメジャーよりもGマイナーのキーの方がしっくりくるので、曲が本当はGマイナーで始まったかのような印象を一瞬与えるのだ。
You can hear modal mixture in very first two chords of the song: Gm and Dm. While Gm does occur naturally in Eb Major, it doesn’t work well to establish the key; the I and V chords, or Eb and Bb, do that much better. Dm doesn’t fit at all; D should be diminished in the key of Eb major. It can, however, be the v chord of G (natural) minor. Because Dm sounds more at home with the key of G-minor than it does with Eb major, it temporarily gives the impression that the song really began in G minor.
最初の2つのコードはいずれもEbメジャーとは相性が悪い。他方、AbとBbは、そのキーで非常に安定したコードだ。
楽節の終わりでは、コード進行は初めからEbメジャーであったかのように聞こえるが、Dmコードが生み出した一瞬の幻聴で、別のキーで曲を聴いたような気にさせられる。
2つのハーモナイズド スケールにおける同一のコードを見てもらいたい。Dに作られるコードがEbメジャーではディミニッシュ、Gマイナーではマイナーになる一方、Gmコードはどちらのキーでも同じになる。このオーバーラップにより、Ebメジャーのホーム キーから音度を1つ取り除くだけで、GマイナーのキーからDmコードを借用できる。ホーム キーのiiiコードを使用しているこの特殊なモーダル ミクスチャーは、クロマティック ミディアント関係と呼ばれる。
ヴァースの最後には、Ebマイナーのパラレル マイナー キーから借用されたCbコードが来る。Ebメジャーの通常のCmよりも半音低いため、ローマ数字でbVIと記される。これらのコードの切り替えは、曲の音が再びマイナー キーからモジュレートしたような気分にさせる。それは、子供たちが喋る各ヴァースのパートとも一致していて、ナレーターに重ねて彼らの言葉と感情を強調している。その直後にイントロダクションと同じGmとDmを使ったコーラスが現れると、コード進行はEbメジャーからさらに引き離される。そして次のヴァースで再びEbメジャーに戻ってくる。
ヴァースの最後でモーダル ミクスチャーが突然発生し、ナレーターから子供へフォーカスが移る
その効果として、曲に2つのサイドが生まれている。物語を語るナレーターによるEbメジャーの安定したサイドと、いくつもの異なるマイナー キーのコードで子供たちが喋るサイドだ。私達はナレーターの視点からしか聴かないが、モーダル ミクスチャーのおかげで物語を語る人物と子供たちのあいだの距離がわかるようになり、彼ら全員の関係性が根本的に決定付けられている。
モーダル ミクスチャーを自分で試してもらうこともできる。よく知っている曲を選んで、いくつかのコードをメジャーからマイナーに切り替えたり、その逆をしたりするのだ。それが曲にどのような効果を与えたか、そして、歌詞全体に対するあなたの解釈をどのように変えたかを考えてみてもらいたい。モーダル ミクスチャーは曲の意味を深めるためのパワフルなツールとなる。そして、あなたの演奏と作曲に複雑さを増すのにうってつけの方法でもある。(※各リンクから外部の英語ウェブサイトに移動します。)
Margaret Jonesは、カリフォルニア州オークランドに住むマルチプレイヤー、ソングライター、音楽教師。自身の作詞作曲プロジェクトM Jones and the Meleeなど、複数のローカル バンドでギターを演奏している。また、カリフォルニア大学バークレー校で音楽史の博士号を取得しており、サンフランシスコ音楽院で教鞭を取っている。
「2017-08-07-Matt_Duboff-Crash Test Dummies-129」 (著作者:2017 Canada Summer Games は CC BY 2.0ライセンスののもとで使用を許可されています。
Rocksmith+の増え続ける曲のライブラリーでは、これ以外にもたくさんの曲を学べる。さあ、音楽の旅をさらに進めよう!